
今、私の瞼は腫れている。
思えば、歌う前に腹ごしらえのピンボケ写真を撮った時は、嵐の前の静けさだったのだ。
忌むべき、ささやかな自信とちっぽけなこだわりは、棄てたつもりだったのに。
なのに、歌う回数を重ねるごとに、良くみせたい欲という、醜さが生まれて育った。
こんなにも憎んでいたものを自分が孕んでいる悔しさよ。
そして、込み上げてきた涙と共に膿みは流れた。
まっさらな気持ちで歌ったファーストテイクが、この物語の声だったのだ。
勇気を持て!
そのままを表現することに!
ありがたいことに、私は
音符を操る音楽家や、
美しく妖しい写真で、心臓を鷲掴みに出来る天才、
夢で見た絵を描く絵描きや、
針と糸で痛みを突き刺してくれる芸術家、
生と性は何たるかを考えさせてくれる存在や、
病気と向き合う勇気を持ってる人、
それを支えている人、
無償の愛をくれる人や、
曇りない純粋な瞳で私を見てくれる人を知っている。
私の知らない私を教えてくれる、
彼らや、
貴方がいなければ、
嗚々!私はなんとつまらない人生を生きていたことか!
生かしてもらっている私のいのち。
ありがたくて、ありがたくて、ありがたくて。
破り捨てた殻を燃やして歌ったら、
少しは世界が変わるかもしれない。
少なくとも私の宇宙は蠢き、生と死を絶えず繰り返し始めた。
私の歌物語を聴いてほしい!
世界中に広がっていけ!
松井優子